第41回星光技能コンクール

密着レポート 長崎営業所 代表

全国ビルクリーニング技能コンクールに参加する代表チームは、大会当日までの日々をどのような想いで過ごし、また日常の業務へと何を持ち帰るのか。今回は、長崎営業所代表チームに大会前から密着し、大会にかけるリアルな姿を追っていった。

加藤礼子さん 清掃スタッフ 2004年入社

中川日出子さん 清掃スタッフ 2015年入社

お客様やパートナーを常に意識。大会で得たのは、「周囲を見る目」。

「他社では聞いたことがなかった」。初のコンクール出場に、昂る好奇心。

今回、長崎営業所の代表に選ばれたのは、加藤さんと中川さんの2名。4回目のコンクール出場となる加藤さんは、12年のキャリアを持つベテランスタッフ。過去には5位に入賞したこともある実力派だ。一方、中川さんは入社前から清掃業に携わっていたものの、こうしたコンクール出場の経験は初めてとのこと。しかし、「こうした取り組みがある会社は他に聞いたことがありませんし、興味はありました。好奇心旺盛なので(笑)」と笑う。

通常、コンクールでは男女混合チームが目立つが、今回あえて女性だけのチームを選出したことについて、長崎営業所の森所長は「女性特有の柔らかくメリハリのある競技を期待して」と狙いを語った。「加藤さんはとても元気で活発な方」「中川さんはとても優しく仕事もできる」とお互いを高く評価する2人は、日頃の業務でもコンビを組むことがしばしば。練習にあたっても「声かけをしっかりしていこう」と確認し合い、女性ならではの密な連携が期待できそうな滑り出しとなった。

日常業務を行う加藤さん(上)と中川さん(下)

1日6時間かけて、13分間の競技を身体に覚えさせていく。

コンクール本番を翌週に控えたある日、長崎営業所が入居するビル上階にある会議室を訪問した。先日の取材から2ヵ月の間、加藤さんと中川さんはこのスペースを借りて毎週のように休日練習を行っているという。指導員が見守るなか、ハキハキと声をかけ合いながら、スムーズに連携を行っていく。競技時間はわずか13分間だが、その13分を完璧にするために、1日6時間ほどかけて練習に取り組んでいるそうだ。

指導員の石山さんによれば「コンクールでは、定められた作業をスムーズに行って、ちょうど13分程度。急いで雑になってもいけないし、丁寧過ぎて遅れてもいけない。非常にシビアな時間配分が求められるんです」とのこと。まず競技の流れを覚え、それができたら時間を意識していく。さらにコンクールでは「見せる演技」が求められるため、メリハリのある動作など、表現力に磨きをかけていくことも必要となった。

チームの役割分担として、出場経験豊富な加藤さんが競技中の道具の準備・片付けなどを担当することとなった。パートナーの清掃の進み具合を見ながら次の準備を行い、競技の一連の流れをつくる重要な役割だ。「やっぱり競技用の動作を覚えるのは難しいですね」と中川さん。初出場ということもあり、「どこまでやれば充分練習したといえるのかわからない」ことも、プレッシャーを重くしているようだ。しかし、指導員の石山さんは最後にこっそりと聞かせてくれた、「もしかしたら、今年は入賞するかもしれませんよ」。

平成27年11月20日 大会当日

豊富な練習量とチームワーク、そして長崎営業所全員で勝ち取った3位。

コンクール当日、2人は緊張の面持ちで会場に姿を見せた。初参加の中川さんはもちろん、4回目の出場となる加藤さんも「上がり症なんです」とぎこちなく笑う。前日から所長とともに大阪入りしたという2人は、決戦を控えた会場を視察したとのこと。
3位以上に贈られるメダルを見て、加藤さんは「これを持って帰りたい」と強く願ったという。以前5位に入賞したときは盾を受け取った。しかし、「次こそはメダルを」と。

学科試験を午前に終え、午後からいよいよ競技へ。「競技中のことは、ほとんど覚えていません」と後に語る中川さんだが、競技中の動作は非常に堂々たるもの。身体が一連の流れを覚えていた証拠だろう。 一方、加藤さんも「練習通りうまく声かけしながら連携がとれました。中川さんのことも周囲もしっかり見えていた気がします」とのこと。作業中にピタリと静止するシーンもあったが、実は「中川さんの作業終了のタイミングを待っていた」のだという。朝の緊張とは打って変わって、経験を活かして冷静な進行をリードしていた。「見ているこっちの方が緊張したよ」と笑う所長。入賞できるとまでは、まだ誰も思いもしなかった。加藤さんによれば「少し時間をオーバーしてしまったかもしれない」という不安もあったという。

表彰式、受賞チームが下位から順に呼ばれていく。「5位か4位には入っているのでは?」と微かに期待していた所長だが、4位になっても声はかからず。「よくがんばった」と2人を労おうとした、その瞬間だった。「3位、長崎営業所」のアナウンスが鳴り響く。周囲の祝福に包まれながら、信じられないような顔つきで壇上に上がる2人。社長からメダルを受け取り、席に戻ってようやく実感が湧いたという中川さん。加藤さんも、本社の女性指導員から「よくがんばったね!」と声をかけられて涙がこみ上げてきたという。

長崎営業所に凱旋した2人を、スタッフ総出での盛大な祝福が迎えたことは、言うまでもない。練習には所長や指導員のみならず、先輩も含めた多数のスタッフが参加。まさに、長崎営業所全員で勝ち取った3位だった。

「努力は裏切らない」清掃技術をさらに高めていき、仲間の助けに。

コンクールから半年後、ふたたび長崎営業所を訪ねた。大会前と同じ日常・定期清掃、特別清掃に取り組んでいるという2人だが、内面は大きく変化したという。「声かけをする癖が付いて、以前より周りが見えるようになった気がします」と声を揃える。「お客様やパートナーに対して、常に気を配れるようになったのでは」と所長。今も時折コンビで作業をする機会があるが、そのときも息はピッタリだとか。加藤さんは「中川さんと練習できなくなったのが、少しさみしいかも」と笑う。
以前より何でも積極的に取り組むようになったという中川さんは、「人の嫌がる作業も進んで担当していきたい」と話す。自分のできることを増やすことで、仲間の助けになりたいのだという。加藤さんもまた、清掃技術の向上に熱意を燃やす。「努力は裏切らないと実感したのでしょう」。所長はそう言って、目を細めた。